週末猟師

休日に射撃や狩猟を楽しむ

弾道学・弾薬学

超弱装弾の研究⑤ 実射結果(腔圧推定)

日本ではマグナム散弾用に使われている推進薬 Longshot を,30-06 の弱装弾用として使用することを念頭に実射試験を行った結果,弾速とグルーピングについてはそれぞれ以下のようになったことを示しました. weekendhunter.hatenablog.com weekendhunter.hat…

超弱装弾の研究④ 実射結果(グルーピング)

日本ではマグナム散弾用に使われている推進薬 Longshot を,大口径ライフル 30-06 の弱装弾用として使用することを念頭に,前回は弾速の測定結果を示しました. weekendhunter.hatenablog.com 今回はグルーピングの計測結果について述べます.薬量毎にそれほ…

超弱装弾の研究③ 実射結果(弾速)

前回は弾造りしたところで終わりました. weekendhunter.hatenablog.com H-4895 を定量の半分強程度使用する(メーカーが公式に認めている方法)減装弾を更に弱装化するために,散弾に用いられる速燃性火薬を少量ライフルに適用することで,超弱装を実現しよ…

超弱装弾の研究② 30-06弾試作完了

前回 30-06 の超弱装弾として Longshot をかなり控えめにいれたところまで紹介しました. weekendhunter.hatenablog.com まだ実射試験が終わっていないので安全性も確認できておらず,薬量に関しては書きませんが,Longshot というのはかなり稠密なため,ま…

射撃場では FMJ じゃないほうがいいかも?

大口径ライフル射撃ではジャケット弾の使用が一般的です.狩猟用に使用されることのある銅弾は,従来のバレルでは命中精度が下がることがある上に,なにより高価.鉛弾は腔圧が高く出来ない=弾速が出せないので,これもまた精度が落ちます.まあ鉛弾は 22LR…

超弱装弾の研究① 構想からの装填

これまで主力推進薬は Hodgdon H4895 にしていました.フルロードにすれば普通の弾速が出せて,遅くて良いのであれば半分くらいに減装しても遊べるので便利だったわけです. うちではこれに加えてマグナム散弾用に Longshot を持つという二本立てできてまし…

新しい弾速計

gavin のチャンネルのこちらの動画で,新しい弾速計が紹介されています. youtu.be Bulletseeker(Speedtracker) Mach 4 というドプラレーダ式で,こんな風にマウントするみたい.PICレールに載せられるから汎用性ありそう. フラッシュライトみたいな見た目…

クリンプ方式が弾速に与える影響

【事前説明】弾頭が薬莢から外れないように噛み込ませて固定することをクリンプといいます.標的射撃においては一発づつしか装填しないので必要はないのですけど,狩猟の場合はマガジンに弾を入れておくことになります.最初の弾を発砲すると,その衝撃でマ…

温度勾配をもつ銃身による着弾点移動の定量評価(5):追補

前稿で銃身上下に 8.8 ℃の温度差があると,百m先で着弾点が 15cm 上がるという計算結果を述べました.↓ weekendhunter.hatenablog.com ただこの導出過程ではいくつかの仮定や近似をしており,気になった方もおられると思います. 自分でも計算しながら気にな…

温度勾配を持つ銃身による着弾点移動の定量評価(4):曲率半径と銃身変位および結論

前エントリ↓では伸び量から曲率半径を求めました. weekendhunter.hatenablog.com ではこの曲率半径が生み出す銃身の変位について考えましょう.図示すると以下のようになります. 銃身が曲率 r で曲がっているとき,曲率中心から円弧をみた角度 θ は, θ = …

温度勾配を持つ銃身による着弾点移動の定量評価(3):伸び量と銃身の曲率半径

前エントリでは温度変化と伸び量に関して述べました. weekendhunter.hatenablog.com ではこの伸びが銃身下面にあるとき,銃身がどれだけ曲がるかの曲率を求めます.図示してみますと以下のようになります. 銃身の太さは本来場所によって異なりますが,ここ…

温度勾配を持つ銃身による着弾点移動の定量評価(2):熱膨張率と伸び量

前エントリ↓では 22" バレルの筒先が 0.84 mm あがるだけで,100 m 先では 15 cm 上に着弾するということを述べました. weekendhunter.hatenablog.com ではこの筒先変位を生み出す熱膨張について考えます.鉄の熱膨張率は純鉄で 1.17×10-5 /K,鋼鉄で 1.22×…

温度勾配をもつ銃身による着弾点移動の定量評価(1):序論および筒先変位と着弾点上昇

先日エントリしました「銃身過熱による着弾点変化」について定量的な評価を行いました. weekendhunter.hatenablog.com 記事は上記にリンクしましたが,連続射撃を行ったところ,着弾点がどんどん上がっていくという現象がおきまして,この原因は銃身の過熱…

金属学への招待

いつもの図書館シリーズです. 金属学への招待 幸田成康著 定価は2500円の本ですが,今買うととんでもない値段になっていますね. 著書の説明に「時効硬化」とあったので,鉛合金で弾頭を鋳造する際の知見が得られないかと思い,借りてみました. 時効硬化と…

今年の新製品:Caldwell VelociRadar

SHOT Show 2022 の話題から続きましては,こちら. Caldwell VelociRadar Chronograph これを見て思い出すのは Labradar ですよね. Labradar 多分これと同じく,電波法の制限で日本国内では使えないと思いますが,一応どんなものかは確認しておきましょう.…

火薬学の基礎

図書館シリーズです. 著者は立派な経歴の方なのですが,日本語の文章がちょっと変です.以前採り上げた新編火薬学概論の方が私には勉強になった感じ.でも力学の度合いはこっちのほうが大きいかな?まあ著者の専門が違うのでしょうね.直接火薬に関係してい…

減装弾の異常腔圧現象

リロード時に火薬を入れすぎると危なそう?とは素人でも思うことでしょうけど,実際は通常使用されるタイプのライフル用緩燃性火薬を使う限りは,薬莢にめいっぱい火薬を入れても危ないレベルに達するケースはそれほど多くありません.それより危ないのは,…

新編火薬学概論

もちろん図書館シリーズです. かなり総括的な本で,我々の興味のあるところの小銃用の発射薬なり銃用雷管に関する記述も少しはありまして,興味深かったです.もちろん爆薬関連の方が詳しく書いてありますが,以前ご紹介の「火薬のはなし」よりは銃関係マシ…

弱装で Concentricity は効くか?

ライフル射撃では弾速を上げ目にした方がまとまりが良くなると言われていて,実際私の経験でも弱装(火薬を少なくする)では通常よりもバラツキが大きくなる傾向です.そんな弾でも Concentricity Tool を使って runout を小さく(真っ直ぐ)するとグルーピ…

meplat まわりを考える

射撃というと銃にこだわる人は多いと思いますが,究極一番大事なのは弾頭なのです.銃はその弾頭を投擲する手段にすぎません.もし同じ弾頭が同じ弾道,弾速で飛翔していれば,発射した銃が拳銃であろうと大砲であろうと,更に極端なことを言えば手で投げて…

Magnetospeed の過渡弾道に与える影響

Magnetospeed というのはこんな感じの弾速計です. センサーを銃剣のようにバレルの下に取り付けます.とても軽くて,光学式ではないので照明環境にも影響を受けない利点があります.が,着弾点がセンサー装着の有無で変わってしまうと言う欠点があるという…

雷管ブランドによる着弾点の変化

私だと雷管の差があっても,自分自身の腕の悪さにマスクされてしまうので,せいぜい弾速を測ることくらいしか出来ません.実際に以前測ったときにはそれほど大きな差では無かった記憶があります.WLR より FIO の方が分散が大きいとか,そんな結果だったよう…

平滑銃身には Lee より Lyman かも?

世の中の種々の弾頭の先が尖っているのは空気抵抗を減らして遠くまで飛ばそうという意図があるからですが,そうなると弾頭の重心が後方に下がります.そしてこれが空力的な中心よりも後ろになると静安定性が欠けてしまいます.静安定性が欠けても飛翔安定性…

【カンペ】.308cal 150gr SPBT 3000fps

大島さんのご要望にお応えしまして,弾頭を仮に Sierra Spitzer Boattail (GameKing) と仮定してカンペを出してみました.スコープ高は 1.5" で,100 yd ゼロです. 残存エネルギー的には 500 m くらいで 1000 ft lbs を割り込むので,このくらいが限界でし…

薬量とσの関係

というわけで,DC-435 の load data を作ったのですが,このとき5発で平均を求めているので,ついでにσ(標準偏差)も求めてみました.要するに弾速のばらつきを示すものです.条件は以下の通り. barrel length: 22" twist rate: 1:10" chronograph: Magne…

Knock Out Factor

Podcast で Taylor KO Factor という狩猟におけるストッピングパワーを評価する指標が出てました.wiki だとここにあります.以降 TKOF と表記します. この TKOF は 弾頭重量(lb) × 弾速(fps) × 弾頭の直径(inch) で表せます.例えば 7.62mm × 51mm NATO の…

計算ついでに .30 cal RN と 12番スラグを比べてみる

弾道計算に必要なパラメータはいくつかありますが,スラグのデータってあまりないんですよね.で,マズルローダーとかに使う弾頭とかを参考にして,仮に BC を 0.2 G1 と置いてみます.まあ近距離ではあまり大きな差は出ないだろうという想定ですが. 12GA, …

270 Win の弾道

今回の検索ワードはこちら 270winの弾道 計算はできるのですが,パラメータが少なすぎますね.なので勝手に仮定してみます. 弾頭はだいたい 130 gr くらいが適当みたいですね.で,Lyman 50th のレシピをざっと見ると,これを 3000 fps 見当というのが妥当…

【勝手にFAQ】短い銃身は広がるのか?

今回の検索ワードはこちら 銃身長 散弾 広がり多分ですが,銃身が長い方が散弾の広がりは小さく,銃身が短いほど散弾は開く,と考えておられるのかも?と想像します.なので,表題のような疑問だとしましょう. 自分自身で実験をしたわけではないのですが,…

【勝手にFAQ】BC値とは

今回の検索ワードはこちら. BC値とは はい,簡単に言うと drag です.これは弾頭が飛行するときに空気抵抗によって後ろに引っ張られるように働く力のことです. ここで取り出したるは Hornady 本.笑 いろんな弾頭を作っている会社なので,この本にはそのあ…