週末猟師

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各種弾速計の測定原理

現在市販されている弾速計(chronograph)の測定方法はいくつかあります.まず最初にあげるのは以前からメジャーであった光学式ですね.各社から出ていますが見た目はこんな感じです.
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二つの三角形ループの内側を弾が飛びます.この三角形の下の頂点部分には光学センサが入っていまして,そこへ入射する光量の変化を検知します.手前のセンサが弾頭の通過を検知したあとで,奥のセンサが検知し,その時間差とセンサ間の距離から平均弾速を計算し表示する仕組みです. この三角形の上辺の白いプラスチック板はディフューザといって,弾頭がセンサーに適度な陰を作るように補助しています.強い直射光が入らないようにするためのものなのでこの板がなくても問題ない場合も多いです.逆にあまり暗いと計測できないので,射台が暗い場所にある場合などは光源をここに付ける必要がある場合もあります 原理が割りと簡単なので昔から広く使われている方式ですが,欠点としては別途光源が必要な場合があったり,既存光源があってもちらつきがあるとうまく動かなかったりします.ライフルの場合はマズルからある程度離して設置しないとディフューザが吹き飛んだりするのですが,射台の前の適当な高さに設置しにくい射撃場も多いです.私もスラグで長年使っていましたが,ライフルで使ったら上のような不具合を感じたので,次の方式に替えました. 次は電磁式です.原理的には昔からありますが,弾速計に応用されて市販されたのは近年だと思います.実例は Magnetospeed ですが,他には見かけないですね.
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これは磁界中を導体が動くことで磁界の乱れが生じ,これをセンサで拾う方式です.センサがその変化を感知できる場所が小さいため,弾道の直近にセンサをおかなければなりません.そのため上のようなバヨネット式と呼ばれるセンサユニットになったわけです. この方法の利点は光源の必要がないことです.明るかろうが暗かろうが関係ありません.あとはこの製品はとても軽く作られているので,マズル直近にセンサをマウントするのが簡単です.弾頭が通過する場所から1,2cmくらいの所にセンサをおくため,マウントアダプタは銃によって高さが変えられるようスペーサが入っていますが,別の銃に付け替えるときはこれを替える必要がある場合もあります.これは欠点の一つかも知れませんが,普通は何丁も弾速を測ったりしないと思うので,気になるかどうかは状況次第でしょう.あとは弾頭が導体でないと検知できません.が,現在我々が使う弾頭で非金属はないと思うので大丈夫ですね. 三つ目は音響式です.市販例は Steinert Sensing Systems の SuperChrono です.
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図を見て分かるとおり,弾頭が発生させる衝撃波を,ある間隔をあけて設置した音響センサ(書いてませんが圧電素子だと思います)で拾い,その時間差から速度を計算する方法です. これの利点は光源に左右されないことはもちろんですが,弾頭が通過する場所がある程度センサーから離れていても検知できることです.もちろん銃口よりは前に置かなければなりませんし,進行方向に並行にしなければなりませんが,設置にかなりの自由度はあります.欠点は音速を超えていないと測れないことです.音速以下だと音の方が早いので測定結果が音速に収束してしまうわけですね.まあスラグでも普通音速は超えているので大丈夫だと思いますが,サブソニック弾は原理的に無理と言うことだけは知っておく必要があります. 最後はレーダ式で市販例は labradar です.
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原理はスピード取り締まりレーダと同じで,電波を出し,飛翔する弾頭からの反射波を拾ってその送受の周波数差から速度を計算するドプラレーダです.前述の三つは二個のセンサを通過する時間差から弾速を計算するため,そのセンサの地点における弾速を測るものでした.通常はマズル近傍に設置しますからマズルスピードを測っているわけです.ところがレーダ式の場合は反射波が検出できる距離までの任意の地点での弾速が分かります.現にこの製品は 30cal だと 90m 程度までになりますが,そのうちの任意の5点(距離)における弾速が計測できるのです.ただし電波を使用していますし,技適もないと思われますから,日本国内では無線局免許が必要になるでしょう.とても興味深いデバイスなのでいつか入手して免許をおろして使ってみたいものです.