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【勝手にFAQ】バレル長∝威力

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30-06と308win威力

ないとは思いますが,万が一誤解しているといけないので最初に書きます.例えば 150gr 弾頭を 2800fps で飛ばした時,その運動エネルギーはそれが 30-06 から発射されたものであろうと,308Win から発射されたものであろうと同じです.要するに威力は同じ.例えて言えば 1kg の鉄と 1kg の綿はどっちが重い?みたいな感じでしょうか.笑

では 30-06 と 308Win は口径や雷管は一緒だけど何が違うか.それはもちろん薬莢です.デザインについてはおいとくとして,薬莢容量で比べた場合,308Win は 3.6cc なのに対し,30-06 は 4.4cc と2割ほど大きくなります.実際にこれらがどのような差を生むか Hodgdon のレシピで比べてみましょう.弾頭はどちらも Nosler BT 150gr とします.すると弾速がもっとも出るパターンで Max load が

  • 308Win CFE223 51.5gr 2974fps
  • 30-06 Suprform 65.0gr 3072fps

となります.このように 30-06 の方が早い組み合わせが見つかりますから,30-06 の方が威力があると一般的には言えるかも知れません.ただしこのレシピの場合の威力(運動エネルギー)の差は 6.7% にとどまっているのに,火薬は 26% も多く必要になっています. 薬種が違うと比較しにくいので同じ CFE223 の Max で比べてみましょう.すると

  • 308Win CFE223 51.5gr 2974fps
  • 30-06 CFE223 54.2gr 2942fps

となります.弾速は 30-06 の方がわずかながら遅いのに薬量は 30-06 の方が多いですね.

ここで薬量か弾速を同じにしたほうが比較しやすいのでそうしてみましょう.弾速と薬量は通常使用される範囲ではほぼ線形と見なしうるので,最大腔圧を無視して 30-06 も 308Win と同じ 2974fps 出せる薬量を計算で推定すると 30-06 で必要な薬量は 54.9gr となります.これは他の人がどう表現するかはわかりませんが,私の言い方では「燃費が悪い」といいます.笑

定量的に言えば,このパターンでは同じ弾速を得るために 30-06 のほうが 6.6% ほど多い薬量が必要となるわけです.では最初の 26% なんていう大きな差はどうしてかというと Superformance という火薬を使っていて,これは 4350 などよりかなり遅めの火薬なので相当量の燃焼エネルギーが無駄になっていると考えられるのです.

さて,レシピのバラエティを見れば 308Win が 208gr 弾頭までなのに対し,30-06 は 220gr まで載っているわけですから,30-06 のほうが重い弾頭まで使えると言っていいわけですが,それほど大きな差があるわけではない上,同じ弾頭で同じ弾速を出すという条件ではこれまで述べたように 30-06 のほうが余計に火薬を必要としてしまいます.

一方,弾速を出そうとすると,緩燃性火薬を多く使う必要があるものの,308Win は容量が小さいため 30-06 に比べると最大弾速は出せないということになります.しかしこの利点を生かすためには加速長が大きい,すなわちバレル自体も長いものが必要ですから,短いバレルでは 30-06 であっても無駄が多くなります.具体的にはこのエントリに載せているレシピは 24" の場合で,これは普段使いにしては長い部類に入るかと思います.結局のところ 308Win と比べた時の 30-06 の利点はバレルが長い時にしかないと言ってよさそうです.というか,威力の差はカートリッジの差より,バレル長の差のほうが大きいといえるのではないでしょうか. 結局総合的に考えると,20" とかの短い銃身のライフルであれば一般論として 308Win のほうが優れているといえるでしょう.弾速をとにかく出したいという場合は長い銃身が必要となり,そのときは 30-06 のほうが薬莢容量が大きいので有利,という結果になろうかと思います.