現在うちではサイジングダイはブッシュ式を使っていますが,これから始める人にはツブシが利くように少なくとも最初の一つ目には普通のダイセットを買っておくことをお勧めします.セミオートライフルを使っているなら,フルレングスサイジングダイとシーティングダイの二個がセットになっている 2-die set と呼ばれるもの,そしてボルト式を使っているなら,それにネックダイが入った 3-die set がいいと思います.(ただし入組が異なるものもあるので,セット内容は確認してから買って下さい)
一般的な口径用ではねじ込み部分が 7/8"-14 という規格になっている(ネジがないダイはアーバープレス用)ので,ダイとプレスのメーカーが異なっても互換性には問題がなく使用可能です.しかしそれぞれのメーカーで多少構造が違いますので,その差を知った上で選ぶと良いですね.
まず日本で使用者が多いと思われる RCBS のちょっと前のタイプのサイジングダイはこんな感じだったと思います.(写真はカットモデル)
サイジングダイは通常ディキャップ(使用済み雷管の除去)も一緒にすることが多いので,下にピンが出ています.違いは上の部分ですね.真ん中を通っているのがスタッドボルトで下部にサイジングボタン(内径を規定する役目)とディキャッピングピンがつながっています.その高さを決めて固定するために黒いナットがついています.
サイジングダイのこの部分はピンの出る量を調整するだけなので,一度合わせてしまえばいじることがないと考えれば,この方式でもそれほど問題は無いように思えます.
ところが使ってみれば分かりますが,サイジングダイは汚れやすいものです.なぜかというとサイジングするときには薬莢にルーブを塗るので,それがダイの内側に付着堆積し,汚れを更に呼ぶわけです.それを放置すると錆びやすくなってしまいます.ですから,多少几帳面であれば基本的には1日の作業が終わったら掃除する感じになるかと思います.
さて掃除するときにはどうするでしょう.それには真ん中のスタッドボルトをダイから抜き取る必要があります.ところがこの構造だと下にはボタンがついているので,上には抜けません,上の黒いナットはあくまでもナットでスタッドボルトに止まっているわけではないので,ここを回してもボルトは一緒についてきませんから,スタッドボルト自体を回す必要があります.指でつまんで回せる程度ですけど,それでもネジ部分を指でつまんで回すのはちょっと痛いですよね.頭のすり割りにマイナスドライバーをあてて回すのが本来のやり方でしょうけど,ちょっと面倒ですよね.
そこで RCBS でも新しいタイプはこんな感じになっています.
ローレットナットにナットが重なったようになっています.そしてこの部分の構造はこんな感じなっています.
ダイ側の穴が大きくなっており,上に抜けるようになっていますね.これなら掃除も楽でしょう.
ちなみに Redding だとこんな感じになっています.
上がローレットつまみになっていて,ネジ部分と一体になっているので,ここを回せばステムが上に抜けるのです.掃除するのも楽ですね.RCBS のほうが安いのと,プレスは RCBS の Rock Chucker シリーズが長く売れていると思うので,それにあわせて RCBS にしてる人もいるかと思います.今の RCBS のダイを見ると,新しいタイプを良く目にするので,それなら Redding と比べて使いにくいということもないと思います.ただ無駄にスタッドボルトが出っ張っているのは気に入りませんが.....
というわけで,大体はこんな方式なんですけど,Lee はちょっと面白いです.断面図がこんな感じ.
ステムを支える部分がコレット式になっています.それはなぜかというと,ディキャップ時にステムに異常な力がかかると,コレット部分はステムを挟み込んでいるだけなのでステムが滑って上がり,ピンの折損を防ぐという仕組みなのです.これは一長一短で,このコレットの締付けをある程度きつくしないと抜けるので,日常的にステムの挿抜をするのには向かないと思います.適正な締め付け具合も最初はなかなか分かりにくいかなと.Redding や RCBS はもし折れたらピンを交換すれば良いという考え方で,交換部品がでています.セットを買うと1本予備がついていますけどね.とはいえ,私は十年で1回しか交換していません.それも折れたのではなくて,抜けてどこかに紛失というていたらく.Lee の場合は折れることが前提ではないのでステムと一体になっているのです.
各社の考え方がこのような設計の違いに現れてくるのが面白いですね.ちなみに私はダイについては Redding 派です.でもプレスは RCBS 派です.