プライマ(primer)は雷管とも言いますが，弾頭を飛翔させる推進薬に着火するための爆薬の一種（ミクスチャ，mixture）や，それを撃針の衝撃によってうまく起爆するための発火金（アンビル，anvil）を容器（cup，
カップ）に組み込んだ部品です．世の中にはいろんな種類がありますが，日本で散弾銃やライフルを扱う範囲で用いられるプライマはそれほど種類はありません．詳しい話に移る前にまずは実際の写真を見てみましょう．
使用済みの薬莢から外したプライマです．左の①②がライフル，右の③④がショットシェル用です．①③はプライマを外側からみたもので，中央部がへこんでいます．これは銃側の撃針が叩いた跡です．②④は薬莢内部に向いている側(anvil side)ですが，焼け焦げて黒っぽくなっているのが分かりますね．このようにライフルと散弾では構造が少し違うのですが，この話は後述します．
さてライフルで用いられるタイプのプライマでは分類としては大小ありまして，大きい方(Large)の直径は 0.210" (5.33mm)，小さい方(Small)は 0.175" (4.45mm)です．そして主たる用途名称としてライフル用，ピストル用の２種類があります．結局これらの組み合わせが存在しますので，以下の４種類になります．
Large Rifle
Small Rifle
Large Pistol
Small Pistol
ライフル用とピストル用は，実際の所は対象の銃がライフルなのかピストルあるいは
リボルバーなのかというような区別というわけではなく，
カップの深さの違いです．ピストル用の方が
カップが若干浅いので，ライフル薬莢に取り付けると奥の方まで入ってしまい，うまく撃発できない可能性があります．逆にライフル用をピストル薬莢に付けると出っ張ってしまう可能性があります．ミクスチャの量もライフル用の方が多く，強く長く発火するようになっています．これはライフル用の薬莢の方がより burn rate の遅い推進薬がたくさん入る傾向にあるからです．
カップの直径が違うのでラージとスモールを入れ替えることは出来ませんが，深さの方の違いはわずかなので薬莢などの組み合わせでうまく発火できることが分かれば，ライフルでも燃焼特性の調整のためにピストル用プライマを使用することはあります．
なおバリエーションとしては上記４種それぞれのプライマには通常タイプとマグナムタイプがあります．マグナム用の方がより多くの推進薬に着火できるよう，より強い激発が起きるようになっています．ただしレシピは違うので不用意に使うことは避けた方がよさそうです．またプレミアム，もしくはベンチレスト用と題したものもあるようですが，これはミクスチャの量のばらつきが小さくなるように製造時に配慮を行っているということをPRするもので，基本的には通常タイプと同じと考えて良いでしょう．
ではこの使用済みのプライマを分解してみましょう．
上がラージライフルプライマ，下がショットシェルプライマです．一番左の①③は
カップですが，これはライフルもショットシェルも同じですね．大きさが若干ショットシェルの方が大きいだけです．②④はアンビルで，これは形状が違います．⑤はバッテリー
カップでショットシェル用にしかありません．これはライフルの雷管のプライマポケットは雷管のヘッドの一番丈夫な部分であり，
カップが叩かれたときにアンビルが前進しないようプライマを保持する強度がありますが，ショットシェルの場合はプライマポケットがプラスチックのため必要になるものと考えられます．というのも，ショットシェルの金属ロンデルは薄い金属板をプレスで成形したものでそれ自身の強度はほとんどないし，火炎が伝わるフラッシュホール側はアンビルを保持する構造がないのです．またアンビルの形状が違うのは，アンビルを保持している部分がライフルでは
カップそのものであるのに対し，ショットシェルでは
カップではなく，バッテリー
カップの内側にくっついたようになっているためです．なおライフルのプライマは圧入されると
カップにより押し込まれて，プライマポケットの底面でアンビルを保持するようになります．ちなみに材質はライフル用は
カップもアンビルも真鍮のようですが，ショットシェルは（この製品に関しては）三つの部品は全て鉄に銅などをメッキしたものでした．
ショットシェルプライマは現在流通しているものは規格としては１種類しかありません．しかしメーカーによって微妙にサイズが異なります．私が使った範囲では日本やヨーロッパで使われているものは少し大きくて，
アメリカのものはやや小さいです．従って，日本やヨーロッパの薬莢に
アメリカのプライマを付けようとすると，緩くて脱落することがありますし，逆だときつくて入れるのが大変という感じになるかと思います．ライフルのプライマは割と選択肢がありますが，ショットシェル用は（少なくとも私の行きつけの銃砲店では）Winchester か Federal しか扱っておらずいずれも米系ですから，なるべく薬莢も米系を使用しています．在庫の関係で（仕方なく）国産の薬莢を使う場合は専用工具でプライマポケットの内径を狭めるという工程を入れる必要があります．
