週末猟師

休日に射撃や狩猟を楽しむ

過少薬量による異常高圧を考える

減装弾を開発しようとすると障害になるのが停弾と異常高圧です.前者は弾頭が銃腔を抜け切るだけの圧力と燃焼時間が確保できなかった場合におきます.弾頭が硬質な無垢の銅弾だったりすると,銃身交換しかない,という状況に陥ることが考えられますが,一般には減装の目的を考えれば銅弾を使うことはないのでそれほど考えなくて良いでしょう.問題なのは後者です. これは推進薬を減らしていくと,まれに異常高圧が発生し,銃が破損する(そして場合によると射手は負傷,もしくは死亡する)ことがあるらしいです.どのような条件でこの現象が起こるのか研究機関で検証したらしいのですが,同じ現象は観測されていません.よって原因は特定できていません.だからといって実際に起きないわけではないということです. 素人考えですが,私が考えていた仮説は以下の通りです.
(1)エアスペースが大きい  火薬は表面からしか燃焼しないが,薬莢内で火薬の上面が広く開いているため,その広い面全体から燃焼が一気に進んでしまい,圧力が短時間で上がってしまう. (2)残留物の影響  火薬が少なすぎると燃焼しきれない火薬やタール状の残渣が発生する.これが銃腔に残った状態で次弾を発射すると,それが大きな抵抗となり弾頭の進行を遅らせ,圧力があがってしまう. (3)爆轟の発生  火薬の主成分であるニトロセルロースはある特定の条件で爆轟することが知られている.極端に減薬した状態ではまれにこの条件を満たしてしまい,爆轟にいたることがある.
まあ研究機関が「わからない」といってるわけですから,私のような素人に簡単に真実を見つけることができるはずもなさそうですけど,考えるのは勝手ですからね.笑 これらの仮説を一つづつつぶしていって真実に近づきたいところですが,当然なかなかのハードルというか,壁です.とりあえず(1)のエアスペース説は,上面面積が最大になるのは容量の 50% ですけど,異常高圧が起こるのはもっと少なそうなので,棄却かな? 化学系の論文なども見たりしますが,専門外には引っ張りどころが難しいです.ちなみにリロード本を見ても減らしすぎてはダメと書いてあるものはあっても,何故かに踏み込んだものはありませんでした.ところが Lee 本は一味違いました.もちろんこの本でも詳しいことはわかっていないとしていながらも推定される理由が挙げられています.
(1)衝撃波 (2)弾頭が始動するがそのあと停止し,その際圧力が異常に上がる. (3)火薬が弾頭と薬莢に間に押し込まれ,くさびになる. (4)薬莢下方の火薬からの圧力がチャンバー上方に局所的に集中する.
残念ながら推定されている理由が列記されているだけで,詳しい説明はありませんでしたが,(1)の衝撃波というのは,私の考えていた(3)の爆轟生起に関係するかもしれません.(3)のくさび説は私説(2)に似ていますね. しかし Lee 本では,このような異常燃焼は非常に燃速の遅い火薬でごく稀に起きるだけなので,中速より早い火薬であれば気にしなくてよいと結論づけられています.早い火薬が適していますが,逆にこのような火薬をダブルチャージ,トリプルチャージすることのほうが危険なので,そちらを注意するように,ということが書かれていました.また残念なことにどのくらいより早ければいいかという具体的な火薬名は書かれていませんでした.DC-300 などは早い方だと思うのですが,それでも薬量を減らして行った時にはタール状の残渣が残りまして,あまり気分が良くなかったので,これより早いのを使うべきなのかな?と感じました.(もしかしたら IMR-3031 なら違う結果かもしれませんけど)