週末猟師

休日に射撃や狩猟を楽しむ

危機一髪昔話

お題「これまで生きてきて「死ぬかと思った」瞬間はありますか?身体的なものでも精神的なものでも」ということですから,昔,狩猟のときにあった話を.

 

その日は猪の巻狩に参加していました.巻狩というのは大勢で山を囲んで,追い立て役(勢子:せこ)が犬と共に山に分け入って,獲物を追い出す猟です.driven hunt といって,海外でもよくある狩猟方法ですね.逃げ出すルートは大体予想が付くので,そういう場所(立間:たつま)に鉄砲を持った猟師を配置するわけです.

 

立間は山奥よりも里寄りになることが多くて,現に私のそのときの立間も遠くに農家が見えるような場所でした.様子をうかがいながら勢子からの無線連絡を待っていると,里から何人かが上がってきます.人が集まっていれば猪もこないし,一般人の前ですから脱包(銃に装填してあった弾を抜く)しました.挨拶したら,近くにお墓があるそうで,墓参りにきたというのです.

 

その人達が帰った後,立間に戻り,そっと弾をこめました.しばらくするとガサゴソと音がします.鈴の音はしません(犬は鈴を着けている).草葉の陰から見えたのはまさに猪です.犬に追いかけられているというわけではなくて,多少余裕を持って逃げているために落ち着いてトコトコ歩いています.そして段々こちらに近づいて来ました.背景は山肌でバックストップOK.距離約20m.よく狙って引き金を引きました.

 

カチッ

 

あれ?発射しません.あたふたしている間に猪はどんどん近づいて来て,わずか 2〜3m というまさに足下というところでようやく私に気付き,足を止めました.私が動いていなかったというのもあるのでしょうけど,猪って目が悪いんですねぇ.こっちに来るにしても少しはそれていくと思ったのに,こんな時に限って真っ直ぐ来るとは.この頃には私も撃つことは諦め,襲われた場合に備えて腰のナイフを取り出そうとしていましたけど,ジャケットの裾にハンドルが隠れていて瞬時には出せそうにありません.

 

猪とにらめっこになりました.

 

長い時間に感じられましたが,実際には数秒がいいところでしょう.私から殺気を感じなかったのか,プイッと横を向いて,さっきのお墓の方にトコトコと走っていってしまいました.

 

 

助かった〜.80キロくらいのメスでした.これがオスだったら襲われていた可能性もあると思います.

 

 

そして襲われていたらよくて大けが,悪ければ死んでいたかも知れません.牙で内ももを切られるパターンが多いらしく,それで動脈をやられるとのこと.狩猟中に猪の襲撃で亡くなる人はクマに襲われるより多いですから,ほんと気をつけないといけません.

 

ちなみにこのとき弾が出なかったのは,遊底がきちんと閉じきっていなかったからでした.閉鎖を示すマークの出方が半端だったようですけど,このときには気付きませんでした.普段はガチャンと勢いよく閉鎖するのですが,このときは里から人がきたあと,いつもと違う戻し方をしてしまったのが原因だろうと思います.セミオートで注意しないといけない一番のポイントですね.あとはナイフを腰に佩く場合,ハンドルは裾から出しておかないといけないと思いました.歩くときには出ていないほうが落としにくくていいし,普通は止めたり血抜きで使うので出ていなくても問題ないのですけど,こういうことがあると考えちゃいますね.