週末猟師

休日に射撃や狩猟を楽しむ

弾道学にかける夢

ライフル関係の和書はとても少ないですが,これだけ広汎な分野を網羅した本は無いと思います.そういう意味では,現在市場に出ている和書の中では最もライフル初心者から中級者には必携と思う本ではあります.

 

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しかしながら欠点も散見します.もともと雑誌への寄稿をまとめたもののようで,内容を章立てて説明していません.これは著者の責任ではありませんが,記述スタイルから言って編者がうまく構成できる範囲を超えています.よって,一冊の本としての体裁は為していません.著者は既に亡くなっておられますので,この点には目をつぶる必要があります.要するに知りたいことが書いてあったとしても,それがどこだったか見つけるのが難しい本です.

あとは最後の方は内容が意味不明になってきます.意識が混濁した状態って,こういうことなんだろうかと思う部分があります.これは雑誌への寄稿の部分では無くて,誰かに対しての手紙なのでしょう.この部分は編者は配慮して割愛したほうがよかったかと思います.私は思わず読み飛ばしました.

さて弾道学を相対性理論等とリンクさせようという取り組みをしていたように見えますが,載っている式は微積分も出てこない中学数学程度の内容です.その式自体はただしくても,導出も説明もありません.理系の人間であれば痛さが分かると思います.弾道学は相対性理論を持ち出すまでも無く,完全に力学で説明できる内容です.ただ実地において厳密解を求めようとすれば,不確定な要素が多すぎるだけの話です.ただし,それは不確定性原理ではなく確率で述べるものです.

そういう面で見識を疑う記述がしばしば目に入りますが,筆者の長い経験に基づく内容については,少なくともその場では真実であったわけですし,疑いを挟む余裕のない部分について,我々後に続く者にとって勉強になる内容は多いです.

私なりの結論として,一冊の中にこれだけ玉石混淆している本も珍しいとは思うのですが,いわゆるトンデモ部分を読み飛ばすことが出来る知識は必要なものの,ライフルを嗜む日本人には必携の一冊と言ってよいと思います. こちらで購入できます.