週末猟師

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鋳造弾頭の硬度について考える

うちでは鋳造弾頭は鉛合金で作っています.純粋な鉛はスラグでは使ってましたが,ライフルには柔らかすぎるので,これに錫,アンチモンなどを加え,硬度を上げます.材質としての強度は硬度とは別の概念ですが,鉛がある程度入っている合金ではこれらの間に相関があるようで,昔から硬度を調べることが行われてきました. どうして硬度が重要かというと,これによりライフル弾として使用した場合のバレル内の腔圧の許容上限が決まってくるのです.詳しくは Lee の資料で見ることが出来ます.これによると小さな超硬ボールを材質に規定の圧力で押しつけ,そのへこみで硬度(ブリネル硬度:BHN)を推定します.そこから腔圧の上限を求めています.例えば BHN 34.8 であれば 44500 PSI, BHN 8.0 であれば 10300 PSI などと書かれていて,BHN と最大腔圧は比例関係にあります.ちなみに純鉛のBHNは3~7程度ですから,これをライフル弾に使うと腔圧を上げられないことが分かります.実際はガスチェックを弾尾に付ければ,もう少し上げられるとは思いますが,それでも腔圧が上げられないということは弾速も出せないと言うことです. ちなみに逆の使い方もあって,鉛と錫などの合金だと分かっている場合は,この硬度から逆に比率を推測することも出来ます.例えばスクラップでもらってきたようなものの正体を推定するなどといったことができます.そこであまり錫が多いと判断できれば硬度は高いですが,もろくなっていくので鉛を足そうとかいうことになるわけですね.(最初は狩猟用の非鉛弾を作ろうと思っていたのですが,そんなわけでちょっと難しいようです) ともあれ,簡単に硬度を測る手段がないかと考えました.もちろん市販品でも Lead Hardness Tester はいろいろありますが,結構高価なんですよね.原理は簡単なのに,やはり数値化するとなると,それなりの精度も必要になると言うことでしょう.例えばこんな製品があります.Lee からは....
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これはプレスに取り付けて使う物で,左の尖ったものをダイを取り付ける部分につけ,真ん中のホルダをシェルホルダの位置にとりつけて,試験物をおきます.ラムを上げていき尖った部分に押し当て,インジケータで圧力を一定にして試験物を凹ませます.そのあと右側の細長い拡大鏡でへこみの大きさを測ります.(内部にゲージが付いていて大きさが測れます)これは$60くらいです. あとはこんなのもあります.
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これは試験物をはさんでねじ込み,バーニアで読んだ数値を表から BHN に換算するものです.$150くらいします. 鋳造する金属の割合はそんなに頻繁に変えることはないと思いますし,スクラップから拾った得体の知れない合金を原料にするということも今のところは予定がないので,あまり高価な試験機材は買えません.そこで調べてみると,いくつか実現可能そうな方法が見つかりました. 一つは鉛筆でこする方法です.この方法は塗膜の強度を示すための試験方式として JIS にも規定されている由緒ある方法です.また鉛筆の硬度と BHN の簡易な換算もできるので,鉛筆を 2H-6B まで10本用意すれば,BHN が 4 くらいから 28 程度まで推定できるようです.ただし JIS によれば 45°の角度で750g重の力でひっかくとなっており,それ用の装置も売られていますが,これを買うと Lead Hardness Tester より高く付くので本末転倒です.笑 もう一つはブリネル硬度のもともとの測り方を簡易化する方法です.もともとの測り方ではボールの大きさや印加する力の大きさが正確でないといけないわけですが,純鉛のような硬度が既知の物と比較することで,これらの要素を排除することが出来るのです.具体的には試験材と硬度が既知の材料,それに硬いスチールボール(ベアリングボールのようなもの)と万力を用意します.以下のようにボールを材料で挟みます.
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左右から万力ではさみ,ボールが材料にめりこむようにします.当然ですが,このときボールの中央までは凹ませてはいけません.ある程度めり込んだら,万力から材料を取り外して痕跡を確認します.
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測るのは,それぞれの痕跡の直径です.既知材料の痕跡の直径を DREF,試験材のほうを DU とすると,これらの2乗に硬度比が比例します.要するに...
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となるわけです. この試験方法の問題は,ある程度の平面が必要と言うことですね.弾頭のように小さい曲面になっている場合は,ボールを小さくすれば良さそうですが,そうなると痕跡の計測精度に問題が出てきます.この場合は鉛筆法のほうがよいかも知れません.