ライフル鋳造弾頭の仕上げ
仕上げというのは簡単に言うとルーブサイザーにかける,ということです.これはどういうことかと言いますと三つの工程が含まれています.
まずはサイジング.鋳型で鋳造した弾頭は普通は直径が規定より少し大きめになっています.これをサイザーにかけて決まった大きさにするのです.なぜかというと鋳型から出した状態のままでぴったりのサイズにするのは難しいのですね.それは合金の成分などによっても収縮率が違うからです.そこで多少大きめにしてサイズを後で合わせるほうが合理的なのです.この大きくなっている箇所は側面のドライビングバンドと呼ばれる出っ張った部分です.溝があるのでそこに余った部分の金属が入っていきます.このようにサイジングは鋳造弾頭には必須の工程です.ただしスラグの場合はここまで厳密ではないですし,ハーフライフルの場合でもサボットといって噛むのはプラスチック部品で,弾頭本体ではありません.よってサイザーは使わない(というか,ない)と思います.
あとは名前のとおり,ルーブをドライビングバンドの隣にある溝(lube groove)に圧入する働きがあります.このルーブによって弾頭の柔らかい鉛合金がライフリングに張り付くのを軽減します.
最後の一つはガスチェックを取り付けることです.ガスチェックは熱によって弾頭底部が損傷を受けるのを防ぐ働きがあるとも聞きますが,実際の主たる目的は弾頭の側面からの燃焼ガスのリークを防ぐ,シールの働きだそうです.名前からすれば納得できる話ですが.いずれにしてもガスチェックがないと,高圧に耐えられないため,弾速をピストル以上に出すのが普通なライフルでは必須といっていいようです.
では早速作業に移りましょう.ルーブサイザーはこちらの Lyman 4500 を使用します.
下の部分に黄色っぽいルーブが少し見えていますね.ここにサイジングダイをセットします.
今回は .309 を使います.サイズの選び方は後ほど別記事で説明しますね.はい,セット.
実際は落とし込んだだけではダメで,ロックナットで固定します.
付属の専用レンチです.ぐいぐいっと,きっちり締めます.
はい,完了.
あと取り付けるのはトップパンチです.
これは弾頭の先端の形状で決まりますので,モールドを買うときに対応するトップパンチを一緒に買っておく必要があります.ちなみにこんな形状であればメーカーによらず共通に使えるのではないかと思います.少なくとも RCBS と Lyman は一緒です.ちなみにこの弾頭は RCBS の 130gr. Spitzer で,左が対応するトップパンチ(RCBS製)です.
トップパンチを上のラムに付けます.
イモネジ式です.
はい,取り付け完了.
ではこれから作業してみましょう.
まず,ここにガスチェックをおきます.
その上に弾頭を置き,トップパンチを下げてあわせます.
で,うりゃっとハンドルをさげて ogive が少しみえるくらいまで押し込みます.
ここであまり下げると ogive までルーブまみれになるので注意です.なおこの深さの調整は下のネジで行うことが出来ます.下げたままルーブに圧力を掛けます.それには上のラチェットを回します.
カリカリっと
圧力を掛ける場合は CCW(反時計回り)に回します.感覚的には逆かも知れませんが,その向きです.
回す回数ですが,これは体感するしかありません.最初はダイまでルーブが回っていないので,ガンガン回して固くなって動かしにくくなるまで回せばよいのですが,一度ルーブが回りきった後は,少し回せばOK.それも何発かに一回でも大丈夫です.ハンドルを上げますと...
出来上がり.このときルーブが溝に回りきってなかったらもう一度ハンドルを下げて,ラチェットを回して加圧して様子を見ます.
処理するとこんな感じになります.
ピントが甘いので分かりにくいかも知れませんが,上の未処理のモノに比べて,下の方はトライビングバンドが光ってサイジングされていることが分かりますし,またその間に黄色っぽいルーブが入り込んでいるのが見えると思います.また底部にはガスチェックがついています.アルミなので同じ銀色で分かりにくいですが,太さがドライビングバンドと同じになっている(未処理のモノは細い)のが分かりますね.
ちなみに別の弾頭ですが,銅のガスチェックだとこんな感じです.
赤い方がきれいですね.でもアルミの方が安いのでついつい....
次はガスチェックがうまくはまらないときの対処方法を示します.