ライフル射撃では弾速を上げ目にした方がまとまりが良くなると言われていて,実際私の経験でも弱装(火薬を少なくする)では通常よりもバラツキが大きくなる傾向です.そんな弾でも Concentricity Tool を使って runout を小さく(真っ直ぐ)するとグルーピングは改善されるのか?という実験を行いました.
まず実験条件は以下の通りです.
30-06
- case: Lapua full length sized
- primer: WLR
- powder: H4895 25.0gr
- bullet: Sierra 150gr Spitzer
Browning(Miroku) X-bolt
- barrel length: 22"
- twist rate: 1:10"
バレル過熱のデータへの影響を相殺するために,ツール使用したものとしないものを交互に撃って調べます.スタートは 50m における ES (CTCグルーピング) です.
- ツールなし 25mm
- ツール使用 27mm
- ツールなし 36mm
- ツール使用 33mm
- ツールなし 38mm
- ツール使用 39mm
見やすくするためにツール使用時の数値を赤にしました.各5発で計30発をほぼ連続で撃ちました.寒かったことに加え,弱装は発熱量も少なく,標準弾のようにバレルが触れなくなるほどではありません.
過去の実測では先台先の上が最も温度が上がることが分かっていて,そこが約 50℃ になった程度です.事情により今回も枕使用なので,温度上昇よりも私の集中力の欠如の影響のほうが如実に表れています.段々 ES が大きくなってきていますからおわかりでしょう.苦笑 ただし平均を取るとツールを使おうが使うまいが見事に一緒の値になってしまいました.要するにツールの効果は,あっても5発撃った疲労の影響と同程度ということになります.それと作りっぱなし(修正前の段階)で runout が 1mil を下回っている弾も多かったので,実のところは使用した弾頭は差が出にくい形状だったのかも知れません.
さてここではグルーピングは 1mm 単位でしか読めないので,的を 100m に離してみます.単純計算では ES が倍くらいになると考えられるので,より差が見えにくくなるかなと考えたわけです. その結果
- ツールなし 33mm
- ツール使用 28mm
となりました.あれ?倍になると思いきや,50m のときとそれほど変わらないオーダーになりましたね.ツールの効果については1回づつなのでなんとも言えません.では条件を厳しくして 10 発のグルーピングを測ってみましょう.
- ツールなし 53mm
- ツール使用 74mm
- ツール使用 42mm
- ツールなし 86mm
さすがに5発の時と比べると大きくなるので分かりやすいかと考えたわけです.この結果からは平均をとるとツールを使った方が多少良くなる傾向にはあるような気がします.
ただ実は中にはうっかり落とした弾もあって,全ての弾が使用時に Concentricity が確保されている保証がなかったりするのと(実際,flier もあったし),本当は SD とかも求めたいのですが,面倒なのでこれだけで今は比較すると,現時点で言えることは 弱装弾を使用した場合,50m では差がほぼないように見えるが,100m だとツールの効果は多少あるような気がする. という感じで,現時点では,プラシーボ?と言われても仕方ない結果になっています.
今回は的紙を十分用意していなかったので,これくらいしか言えませんが,効果があるよ,または,効果は無いよ,と自信を持って言いたいので,さらに実験は続けます.