週末猟師

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マタギ奇談

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マタギ奇談 工藤 隆雄 著

 

山怪みたいな感じかと思いきや,もっと普通の話が多かったです.まあ不思議な話もあるけど,そんなに怖い感じではなかったですね.

この本で最も興味深かったのは,白神山地世界遺産になったことによる弊害の話です.白神山地は昔から奥地にまでマタギが入り込んで,適度な狩猟行為によって自然にバランスと豊かな生態系をもたらしていました.ところが世界遺産にすることで狩猟のできない,人が入らない土地を設定してしまうと,現在の多様な生態系は維持されなくなるであろうということです.まあ個人的には人が入らなければそれはそれでまた違う生態系に収束するのではないかと考えていますが,その姿はきっと世界遺産に指定するにいたった,将来まで残したい多様な生態系を持った自然(人間の営みもその一部)とは違ったものになってしまうのだろうと想像しました.

現代人はとかく自然から手を引けば自然が維持されると考えがちですが,実際そんな単純なものではないということを理解する必要があります.この理解というのは,当然無知の知を含みます.現在,人類の科学レベルはこの世界の全てを理解するには至っていないわけですから.行政はそれを踏まえて謙虚になり,近視眼的大衆に迎合した耳に甘いだけの施策は忌避しないとですね.

 

今回採り上げた書籍