週末猟師

休日に射撃や狩猟を楽しむ

アマチュア森林学のすすめ

今回の図書館シリーズはこちら.

 

shinringaku.jpg

 

西口親雄著,アマチュア森林学のすすめ・ブナの森への招待です.

マチュアとは題しているものの,著者は林学科で森林動物学を専門とし,演習林でも教鞭をとっていた方ですので,森林とそれを巡る生態系に関しては専門家です.特にこの本ではブナの森を主題としていますが,他の樹種との関連や,昆虫や鳥,ほ乳類など森に住む消費者,菌類や昆虫などの分解者といった循環についても解説されています.

私がこの本を借りた動機は森の中でのイノシシに関する知見を得たいということでした.しかしシカの方が植生への影響が大きいのか,シカについては解説がありましたが,イノシシについては触れられていませんでした.シカの食害についてもですが,他の動植物との関連性を考えると,自然には自動的にバランスをとるような仕組みが備わっており,人間がとやかく手を出すべきではないというお考えでした.またオオカミの再導入に関しても否定的なお立場でしたが,自然の営みの妙を考えると確かにそうだなと得心いたしました.

これらの知見から考えると,農業被害に関しては,有害駆除に税金を投入する付け焼き刃的対応よりも,しっかりとした侵入防止にその分の費用をかけるようにした方が良いだろうと思います.短期的には設備に費用がかかりますが,根本的解決であり,長期的にはそのほうがかえって経済的になる可能性もあります.ただ農業被害がなくなると,農家から見てハンターは益する存在ではなくなるので,現在のように温かく対応してくれたり,感謝されることもなくなると思いますが.苦笑 それは置いとくとして,すると個体数調整のための有害駆除は行わなくても,獲物の増加もしくは狩猟税軽減といった魅力によりその分狩猟者が増えたり,あるいはそれ以上に個体数が増えてもそれを減らす方向に自然は環境を制御すると考えられるからです.まあそれは理想論であり,実際にはたくさんの問題があるから,今のようなことになっているのでしょうけども.

というような感じで,いろいろ考える素地を与えてくれる本でした.