週末猟師

休日に射撃や狩猟を楽しむ

狩猟に生きる男たち・女たち

年越し読書祭(公式イベントではなくて自分で言ってるだけです)で図書館から借りてきた中の一冊です.

 

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狩猟に生きる男たち・女たち 狩る、食う、そして自然と結ばれる
高桑信一著

 

連載記事をまとめて一冊にしたものです.連載開始時は本人は狩猟免許などはなく,取材して見聞きしたことをまとめながら,自論を展開しています.著作なのですから持説を述べることは全く問題ないですけども,狩猟シーンの表現が気になるんですよね.

 

例えば取材相手の猟師についていって解禁日に「ヤマドリが数羽獲れた,なんて記述があります.この「数羽」って物議を醸す表現ですよね.数羽の解釈はいろいろありますけれど,私だったら「3,4羽」くらいと想像します.少なくとも2羽だったら,2羽って書くかなと.それを数羽というとサバを読んだ印象を持ちます.ただ高齢者だと,数羽は4〜5羽をイメージする人が多いみたい.逆に若年層では2〜3羽と思う人が多いそうです.(【蛇足】ヤマドリ・キジの定数は計2)

 

この件については,本を読み進めていくと,他の友だちと一緒に行った,みたいな話(要するに合算したという意味にも取れる)になっていて,更にあとの方では,二羽だった,みたいな書き方になっています.連載なので最初に書いたのに突っ込みが入り,あとから書き足したのかな?と思いましたけど,真実は分かりません.

 

このように狩猟のことを分かっていない人が,取材をしたいと依頼してきたときには,引き受けるかどうかはかなり注意が必要です.というのも,自分自身に違法行為がなくても,書き方によっては変にとられることだってあるのです.だから私だったら,免許(知識)のない人は引率したくないですね.免許持っていても常識がない人はいるようですけども....狩猟以外でもヤマブドウ酒の話とかどうなの?とか,それって熊の爪じゃなくて歯じゃない?とかいろいろツッコミどころはあります.

 

さらには著者が免許取得後,山に入ってからナイフを忘れたことに気付き,家はすぐそばだから「銃とザックをそのままにして,ひとっ走りするかと思うのだが,初心者の身で銃を置き去りにするのは,罪を犯すようで気が引ける」という記述も問題ですよね.安全が担保されていない場所に銃を置いて離れること自体があり得ないので,最初「そのままにして」というのは,「そのまま担いで」の意味かと思いました.当然初心者でなくても置き去りはダメだし,「罪を犯すようで」ではなく,それ完全に違反だから.どこかで非常識を常識と勘違いしちゃったのかも知れませんけど,少なくとも真っ当な常識はまだ身についていないように見えます.猟果が上がるかどうかなんて実際はどうでもいい話で,願わくば召し上げになる前に常識を再確認してもらいたいです.特に本を書くなら,言って良いこと悪いこと,一つ一つの記述を厳しく見直さなくては.被害を受けるのが筆者だけならいざ知らず,取材対象にまで迷惑を掛けることにもなりかねません.いくら素人でも,本を出せば立場が違うのですから,編集部もその辺の配慮をすべきです.まあこの本に限った話じゃないけどね.

 

本の成り立ちが,複数の連載記事をまとめたものなので,同じような話が何回か出てきたりするというのは仕方ないとして,読んでみて,新しい知見はなくとも,肯ける主張は結構あるとは思いました.願わくば今後,自分が狩猟スキルを上げた後に取材することで見えてくる世界を紹介してもらいたいと思います.