週末猟師

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温度勾配を持つ銃身による着弾点移動の定量評価(4):曲率半径と銃身変位および結論

前エントリ↓では伸び量から曲率半径を求めました.

weekendhunter.hatenablog.com

 

ではこの曲率半径が生み出す銃身の変位について考えましょう.図示すると以下のようになります.

 



銃身が曲率 r で曲がっているとき,曲率中心から円弧をみた角度 θ は,

 

θ = 560/r [rad]

 

となり,また変位 h

 

h = r (1-cosθ)

 

と表せますので,これと (3) の結果を代入して半角の公式で変形すれば

 

h = 22400 × sin2 (Δ/40) / Δ

 

が得られます. 

 

最初に求めたとおり,15cm ほどの着弾点上昇をもたらすのに必要な筒先変位は概ね 0.8 mm でしたから,このときの伸び量 Δ は 0.06 mm 程度となります.これは温度勾配 8.8 ℃に相当します.割と小さく,現実的な値ですよね.

 

以上,初等幾何のみで着弾点の移動を説明してみました.もちろん計算中は近似を用いたり,銃身太さは場所によって異なるのに均一とするなど仮定した点はありますが,連射すれば銃身の表面温度は百度を超える部分もでてきて,オーダー的に考えれば 10℃ 程度の温度勾配などすぐに起きるし,そうなれば 100 m 先で 15 cm も着弾点が上がってしまうというのは概ね理屈には合っていると言うことになります.

 

というわけで,ここから得られる知見としては,射撃間隔をあけることは,冷却よりも銃身上下面の温度勾配をなくすのに役立っていたのであろうことと,間隔をあけるなり冷却する際には温度勾配を解消する方に力点を置いた方がよいだろうということです.温度勾配による銃身曲がりが着弾点の変化に大きな影響を持っているという定量的な結果が得られたので,逆に言えば温度が上下で均一なのであれば,冷却し切れていなくても,着弾点変動への影響はそれほど大きくないと推測されます.フローティングバレルではこの点を考慮した設計にすると,射撃間隔が短い場合の着弾点変動が抑えられると考えられます.余談になりますけど,このことからはフルストックはあまり連射には適さないということが想像されますね.見た目が渋いので次のボルトに欲しかったんだけど.笑 

 

【蛇足】フルストックというのはこういう銃です.↓

 

【注意】一度検算はしていますが,間違いにお気づきの方がいらっしゃいましたら,コメントお寄せ頂けると幸いです.

 

おまけ↓

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