週末猟師

休日に射撃や狩猟を楽しむ

サイジング

今週のお題「苦手だったもの」ということで,このブログ関連のネタでお話ししましょう.それはサイジングの中でも,ボタン(エキスパンダーボール)のついた普通のダイでのサイジングが苦手です.これは実際にライフル弾をリロードしてる人にしか分からないネタなので,もうちょっと順を追って説明します.

 

まず使用(発射)済みの薬莢に消耗品である雷管,火薬,弾頭の新品を載せて,再度実包にすることをリローディングといいまして,このブログの主テーマになっています.逆に言うと雷管や火薬は燃えてなくなるし,弾頭も飛んで行ってしまうので,再利用できるのは薬莢だけなんですけど,これは真鍮でできていて値段の高い部品だし,複数回使えるものだから,使い捨てはもったいないのです.

 

 

とはいえ,撃ち殻を拾っただけでは再利用出来ません.なぜなら発砲すると薬莢は内側からの圧力で膨れるからです.特に弾頭を把持する部分であるネックはユルユルになるので,ここは所定の内径に戻さないと弾頭がつきません.この作業をサイジングと言います.ボディの部分も膨れますが,多少太くなっても銃の薬室に装填出来れば支障ないので,薬莢の状況次第ではこの部分はサイジングしないこともあります.が,ネックは必ずサイジングします.

 

このときのネック内径は弾頭の直径よりも僅かに小さくします.その状態で弾頭を押し込むと,真鍮はバネのように戻る性質があるので,弾頭が把持できるわけです.

 

サイジングにはサイジングダイと呼ばれる金型を使います.これにプレスを使って薬莢を圧入するのです.一般的な手順は以下の通りです.

 

サイジングダイの断面はこんな感じになっています.

 

 

ダイ内部の形状や大きさはカートリッジごとに決められています.ボタンというのは緑色のボール状の部分です.ここに使用済みの薬莢を圧入しますと...

 

 

こんな感じにネックがダイの内径に合わせて圧縮されます.続いて,押し込んだ薬莢を引き抜きます.

 

 

引き抜く途中で,ネックの内側をボタンが通りますね.このボタンの直径は弾頭径と同程度になっています.このボタンでネック内径を規定するためには,この前の段階,すなわち薬莢を圧入するとき,ダイ上部で圧縮されたネック内径は,このボタン径よりも小さくしないといけません.さもなければ,ネックがボタンを素通りしてしまう=ネック内径が大きいままになってしまうわけですからね.

 

発砲時には薬莢内部は高温になるので,火薬の残渣はガラス化して硬い微小塵となり,薬莢の内部に残ります.これがヤスリのような抵抗をうみ,ボタンを通過させるには大きな力が必要になるのです.これが私にはとても苦痛で,苦手でした.

 

もちろん残渣が残らないようにきれいに洗浄してからサイジングするならこの問題はあまり起きませんが,洗えば干さないといけないなどなかなかに面倒なのですよね.

 

これを解決するのがブッシュサイジングです.通常のサイジングはネックの内径をボタンで規定する方法でしたが,ブッシュは外形しか規定しません.ブッシュはこんな感じに真ん中に穴が空いたバームクーヘンみたいな形をした部品です.

 


これをブッシュ式サイジングダイの中にセットします.

 


これだとボタンがないので,ネックが通過する際の抵抗はありません.ブッシュに圧入される抵抗はありますけど,薬莢の内側を綺麗にするのは大変なものの,外側をきれいにするのは簡単ですから問題ありません.lube(潤滑油)も使うし.

 

というわけで,苦手だったサイジングも,ブッシュ式を採用することでとても楽になって,すっかり苦手意識は消えました.

 

ただしブッシュ式もいいことばかりではなく,その大きさはネックの内径が規定値になるように選ぶ必要がありますから,使用する薬莢のネックの厚みを調べてブッシュを交換しなければなりません.とはいえ,同じブランドの薬莢だけを使うようにしていれば,大体いつも同じサイズで済むので,私にはブッシュ式がサイジングに対する苦手意識を払拭してくれた福音になっています.

 

あとは普通のダイが一度ネックを圧縮してから,ボタンで拡張するという二回の変形を加えているのに対し,ブッシュ式だと一度圧縮するだけなので,ネック部分の金属疲労が小さくなると言う利点もありますね.さらにはボタンで引っ張らない分,ネックの伸びもあまりないので,トリミング頻度も劇的に下がります.というわけで,ブッシュ式は理屈が分かって使うならばいいことばかりなのですが,ブッシュ自体が高価(1つ$40くらい)であるというのが唯一の欠点かな?と思います.