週末猟師

休日に射撃や狩猟を楽しむ

射撃場では FMJ じゃないほうがいいかも?

大口径ライフル射撃ではジャケット弾の使用が一般的です.狩猟用に使用されることのある銅弾は,従来のバレルでは命中精度が下がることがある上に,なにより高価.鉛弾は腔圧が高く出来ない=弾速が出せないので,これもまた精度が落ちます.まあ鉛弾は 22LR をはじめとした小口径ライフルでは一般的ですが,これは弾速がそもそもそれほど速くないので鉛でも問題ないのでしょう.

 

ジャケット弾ってなに?という方のために説明すると,鉛コアを銅合金で被覆した弾頭のことです.よくある製法としては,銅のカップに鉛塊を入れて,型に入れて圧縮し,鉛を密着させるように作ります.カップの口を絞るような感じになるので,その端は程度の差はあれ開いています.その口を弾頭先端にするか後端にするかの2種類に大別できます.

 


上が弾頭先端,下が弾底とします.赤線は銅のカップで,その内側に鉛が充填されていると考えてください.左は後端が開放されていて,前方に鉛は露出していません.これをフルメタルジャケット(FMJ)といいます.一方,右のように先端に開口部があるもので,鉛がその開口部より前まででているものをソフトポイント(SP),鉛が開口部に隠れていて,口が開いたようにみえるものをホローポイント(HP)といいます.実際には亜種が多くて,世の中にはいろんな形状のものがありますが,ざっくり分けるとこんな感じと言うことです.

 

実物をお見せします.まずはソフトポイントの一種で,出っ張っている部分が尖っているスピッツァーポイント(spitzer point)です.

 


先端に鉛コアが露出していて,ジャケットはカップですからその底が弾底にきます.

 


これに対してフルメタルジャケットはこんな感じです.

 


カップの底が絞られていて,それが弾頭の尖った先端にきています.開口部が弾底にあってこんな感じです.

 


フルメタルジャケットというと,全体が銅に覆われていると想像しそうですが,実際にはこのような製造方法だと片方は開口部になるので,弾底にはコアが露出するわけですね.もちろん全体が覆われているものもあるとは思いますが,コストはこのほうが掛からないわけですし,私が普通に買うような弾頭だとみんなこんな感じです.

 

さてもちろん最初は鉛弾だったところになぜジャケット弾がでてきたのかというと,鉛弾は柔らかいので弾速を上げるほどに銃腔に擦れた鉛がこびりつき,撃つ度に掃除が必要で大変だというのもありますし,火薬燃焼の熱や圧力で弾が変形してしまうというのもあるでしょう.弾が変形すれば真っ直ぐ飛ばなくなります.主には押される弾底が火炎に晒されるイメージでしょうから,銅のカップに入れて,鉛コアのお尻を保護するというのは理に適っているわけですね.

 

ところが同じジャケット弾でもフルメタルジャケットでは弾底に鉛コアが露出しています.側面は銅なので銃腔へのこびりつきは抑えられますし,ジャケットがコアを保持しているので変形は抑えられるとしても,後方からの火炎はもろに受けます.銃腔進行時に後方から鉛が焼食されて,発射時に盛大に噴出するガスの中には鉛のヒュームが含まれることになると思います.

 

日本のライフル射撃場は射台部分が建屋に入っていることが多く,通気はそれほどよくない印象です.私などは年間でも行く回数はそれほどでもないので,なんの問題もないと思いますけど,毎日そこに詰めている人がいるような場合は,健康面での心配は多少ありますね.

 

私は普段フルメタルジャケットは使いませんけども,今後もあえて選ぶと言うことはしないかな,と思いました.射撃場に勤める人が健康で楽しく生活出来ることが,巡り巡って回り射撃者側の利益にも適うわけですからね.