前回は弾造りしたところで終わりました.
H-4895 を定量の半分強程度使用する(メーカーが公式に認めている方法)減装弾を更に弱装化するために,散弾に用いられる速燃性火薬を少量ライフルに適用することで,超弱装を実現しようというのが本稿のテーマです.
今回試射してきましたので,その結果を公表します.ただし後述の通り,取扱にはご注意戴きたい点があるので,参考にされたい方は最後までお読みください.
reduced load test / 2-shot average velocity
- cartridge : 30-06
- bullet : Sierra 150gr spitzer point #2130
- powder : Hodgdon Longshot
- barrel length : 22"
- twist rate : 1:10"
- chronograph : Magnetospeed v3
muzzle velocity vs dosage
後で述べますが,23gr あたりから高圧の兆候が見えています.より多く入れれば弾速が上げられると単純に考えて増薬しないでください.薬量は伏せようとも思ったのですが,このような実験をしようという方は,このレシピの危険性と事故を避ける方法をきちんと理解した上で挑戦するはずだということであえて明示しています.当然ながら Longshot は本来散弾用の火薬のため,ライフルに使うためのものではありません.とても稠密な火薬なので容積が小さく,ダブルチャージしても気付かない恐れが大です.そしてそのように誤った場合の結果はとても危険で悲惨な事故になります.くれぐれも取扱にはご注意ください.
#追記#
データが一人歩きしそうなので一応見解を追加しておきます.火薬が正常に燃焼している領域では概ね薬量と弾速の関係は直線近似できるというのが,今までのリローディング経験から体感していることです.なので,上のデータの範囲では概ね問題ないと思いますが,薬量を増やしすぎて,腔圧が危険な領域になると,弾速はこの直線よりも下になると考えられます.実はこのとき Fiocchi の市販装弾(150gr FMJ で薬量は推定約 62gr)も試射していて,弾速は約 2900fps でした.Longshot ではあり得ない量ですけど,この近似に乗るとして 62gr にすると,計算上の弾速が 5200fps オーバーになります.要するに Fiocchi の火薬は緩燃性,というか,Longshot がライフル的に超速燃性に分類されるため,Longshot でそんな薬量は絶対に入れてはいけません.大事故になるのは火を見るより明らかです.一方 2900fps を Longshot で達成するには線形予測上 32gr となります.が,これも実際はそこまで入れてしまうと事故になると思います.そもそもそんな弾速は弱装弾で求める話じゃないですしね.やっぱり 2000fps 前後がいい落としどころなのだろうと思います.なお 12GA スラグやマグナム散弾であれば Longshot を 32gr いれるレシピはあり得ますが,散弾銃腔はスカスカで通過抵抗が桁違いに小さいため,速燃性火薬でもそこまで腔圧は上がりません.なので,それに合わせた燃速になっているわけです.逆にライフル用の火薬を散弾銃に使うと,燃え残りが盛大に出るはずです.実際にやったことはありませんけど.
次回はグルーピングのお話です↓