週末猟師

休日に射撃や狩猟を楽しむ

アルミ薬莢を考える

薬莢と言えば(腔圧の低い散弾実包などは除外)真鍮で作られているものが多いです.これは発射の際に火薬が燃焼して圧力が上がるに従い薬莢が広がり,薬室に押しつけられることで燃焼ガスを射手(ボルト)方向に漏らさない,そして発射後にはわずかに大きさが戻り,薬室から抜きやすくなるという薬莢に求められる優れた物性を真鍮が持っているためです.ただし軍事用途を考えると,兵士に持たせるにしろ,航空機に搭載するにしろ,とにかく軽い方がいいわけで,それこそ昔からアルミなどの採用は検討されてきました.この経緯でジュラルミンが発明されたというのも有名な話ですね.

歴史はさておき,現在の民生品での状況を考えると,真鍮に対するアルミの利点は価格が安いということでしょうね.最近の金属市場価格(単位はUSD/LB)を調べると,アルミニウムが 0.95 なのに対し,銅が 3.1, 亜鉛が 1.5 です.薬莢に使われる真鍮は70/30が一般的なようなので,価格は 2.6 程度となるでしょう.比率で言えば 2.76 くらいです.これは同じ重さの価格比ですが,薬莢に使われる体積が仮に同じだとすれば,それぞれの比重(8.45/2.68)から考えると更に差は開き,アルミに比べて真鍮は8.7倍コストがかかることになります.

ただ現状アルミ薬莢が使われているのは拳銃用工場装弾ですし,それもリロードには不適だと言われています(貴重なリロード実験結果を公表されているヒロシさんの記事はこちら).ましてや,日本では拳銃弾を使っている人はほとんどいないわけで,当然リロードする人はいません.リロードするならライフル弾ですが,高腔圧に耐えられるようボトルネック薬莢がほとんどなくらいですから,材料的に強度が足りないアルミは使われていないと思います.

軽量な利点を生かすことを考えたとして,日本国内で私がライフルを使うのは射撃か狩猟ですが,射撃は歩き回るわけではないし,狩猟の時はそもそも持ち歩く弾数なんてたかが知れているので,多分アルミ薬莢に触れる機会はないでしょうね.でも雑誌にこんな写真が出ていました.

 

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これは Shell Shock という製品で,ヘッド部分と筒部分で異なる材質になっています.

 

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ヘッド部分がニッケルメッキのアルミで,上の筒の部分がステンレス(ニッケルを含む)です.断面はこんな感じだそうです.

 

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ニッケルは銅の倍くらいの価格ですから,果たして安くなるのか?と思ったのですが,9mm のを500個買った場合で一個12セントだそうです.真鍮製だと例えば14セントくらいですので,まあ少しは安いかも知れませんが,それほど大きな差ではありませんね.ただし重さは半分くらいになるようです.

この製品の利点は記事によると以下のように書かれていました.

 

  1. ケースが伸びないのでトリミングが要らない
  2. 伝火孔がなで肩になっているので火薬に均一に点火しやすい
  3. 伝火孔が「無鉛」雷管に適するよう大きくなっている.今はまだあまり普及してないが将来のため.
  4. ベースに色が付けられるので弾の種類を見分けるのに役立つ.
  5. 真鍮薬莢より安価,かつ5~10回以上多く使える.
  6. 圧力の割に弾速が早くできる.
  7. 軽く,レンジで拾うのに磁石が使える.加えて格好いい(笑)

 

欠点は以下の通りです.

 

  1. リサイジングにルーブが必要.
  2. 弾頭を引き抜くとダメになる.
  3. シーティングは普通のダイで可能だが,サイジングとフレアにはSST製の特別なものが必要.
  4. 新しいものなので些細な欠点があるかも知れない.

 

ちなみに現時点ではこの製品は 9mm 用しか販売されていませんが,ゆくゆくはボトルネック薬莢もでてくるかも知れません.些細なことではありますが,ベースが色分けできるという点が少々興味はあります.でもタンブラーでキレイにした真鍮薬莢って,黄金に輝いていて,とても美しいのですよね.やっぱり私は真鍮かな.笑