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Lee の新旧 Breech Lock を考える

リローディングツール業界 Big 6 の雄,Lee は優れたアイディアとコスト感覚で独特な立場を占めています.Lee の QC (Quick Change) システムは Breech Lock と呼ばれていて,確かに画期的なものです.QC というのはリローディングダイをわざわざ十回以上も回転させてねじ込まなくても,バヨネットマウントのレンズみたいに回転させるだけのスナップオンできる仕組みで,同様のシステムは他に Hornady の Lock'N'Load システムがありますが,互換性はありません.

 

Breech Lock はプレス側の機構が Lee にしかなかったので,このシステムを使いたかったらプレスに Lee を選ぶしかなかったのに対し,Hornady はプレス側のコンバージョンブッシュを出していて,1-1/4" thread のプレスなら他社の製品にも装備できるため,旧来の QC ユーザーには一般的なものでしょう.なお現行の Breech Lock システムはコンバージョンブッシュが出ているので,他社のプレスにも付けられるます.

 

Hornady と Lee の QC には若干の使い勝手に差があります.Lee はネジが細かいので装着時に引っかかりやすく,脱着のスムースさでは Hornady が一歩勝りますけど,装着が多少緩かったりしたときに,プレス操作を重ねるにつれて知らないうちに少しずつダイが回っていって,あるタイミングで突然外れてしまうというような事故がおきないのが Lee の利点でした.「でした」というのには理由があって,同じ Breech Lock を名乗っていても,昔のと今のは違うんですね.

 

例えば現行の Breech Lock Hand Press はこんな感じです.

 


ここに付属のアルミ製ブッシング(ここでは新ブッシュと呼びます)を付けたダイをスナップオンするわけです.

 


ブッシュがアルミになったのは何年前だったかは忘れましたけど,そんなに昔ではないと思います.その前はこんなブッシュでした.ここでは旧ブッシュと呼びます.

 


この旧ブッシュはスチール製で,ロックリングを併用する必要があるのですが,ロックリングはダイを買えばついてくるものなので別に用意する必要はありません.新しいアルミのはこれらが一体化しているということです.

 

一見するとスチールとアルミの差があっても,大した違いはなさそうに見えるのですけども,実は新旧の違いはここだけではありません.昔のプレスを見れば分かります.

 


赤矢印のところにボタンがついていますよね.スチールのブッシュを良く見ると手前に切り欠きが入っています,スナップオンすると,この切り欠きがボタンの所にはまって,意図せず外れたりしないのです.これはとてもすぐれた機構で,これだけは Lee の自慢だったと思うんですよね.ちなみに外すときはこのボタンを押してからダイを反時計方向に回します.しかし新しいプレスではこのボタンが省略されてしまっています.

 

我々日本在住ユーザーが Lee の現行プレスを買うとすれば,Classic Cast Press 一択みたいですけど,これには Breech Lock Bushing update kit が付いてくると書いてあるので,逆に言うとこの回り止めボタンは付いていないということになります.もし Lee を買うなら,流通在庫の鋳鉄製でボタン付きの Breech Lock を探して買うのがお勧めです.

 

現行の Classic Cast Press.ボタンがついてない.

 

ボタン付きなら,旧ブッシュ(現時点ではまだ販売されています)を使えば回り止めが効くし,新ブッシュは回り止めは効かないけど,旧プレスへの装着使用は問題なく出来るはず.

 

ちなみに最近日本の雑誌にも採り上げられていたので,とりあえず安くリローディングをはじめようと思っている人が手を出しそうな Hand Press は正直お勧めしません.というのも,これでボトルネック薬莢のフルレングスサイジングをかけるのはほぼ不可能だからです.正確に言えば,何個かだったら出来るかも知れませんけど,操作にものすごく力が必要なので,数が多くなると体力的に難しいと思います.あくまでも軽補正のネックサイズ限定あるいはシーティング限定となりますから,結局は普通のプレスが別に必要になるでしょう.なお普通のシングルステージでもアルミ製のは避けた方が吉です.アルミ製はピストル用だと思った方がいいと思います.誌面や画面じゃ違いが分かりにくいし,安いからとつい手を出しがちなので僭越ながら.