週末猟師

休日に射撃や狩猟を楽しむ

ゲージの話①:ケースゲージ

case prep(使用済みの薬莢を再使用可能な状態にする作業)では確認のためいくつものゲージを使います.似たような形だけど使い方に違いがあるので,前エントリで説明したものから紹介してみましょう,

 


どっちもただの短い棒に見えますけど,左のスチール製がケースゲージ,右の真鍮製がミニマムチャンバーゲージ(ミニマムディメンジョンゲージ)です.上から見ればどちらも穴が開いていて,ただの筒です.

 


まずは銀色のケースゲージのほうからいきましょう.前エントリに書いたように,ヘッドスペースというのはライフルで一般的なボトルネック薬莢の場合は底から肩までの長さを言います.

 

ケースゲージはこの長さを測るためのゲージで,挿抜しやすいように穴の太さに余裕があって発砲後の薬莢でも入ります.その薬莢を発砲させた銃によって異なるかも知れませんが,このゲージに入らないようなら,異常に薬莢が変形し,戻っていないということですから,その薬莢はもう寿命かも知れないという判断ができます.硬化すると割れやすくなりますしね.ただし排莢時にネックに多少の変形を起こしても引っかかるのでそれは問題ありません.ちなみにこのようにちゃんと入っていれば少なくともヘッドスペースは正常です.

 



もし少し頭が出るようであれば,ヘッドスペースが規定より長いことになるので,ボディのサイジングが必要です(=フルレングスサイジング).ゲージから出っ張っているかが微妙なときはストレートエッジ(簡易的には定規でOK)を当てて確認します.

 

浅い溝は許容範囲を示しており,その間は正常です.実際は溝の底よりも若干低いくらいであれば短いだけなので使用上問題ありませんが,サイジングは金属疲労を伴い,薬莢の寿命を縮める行為なので,薬室に装填可能な限り(太さにも問題がない限り)避けたほうがよいと考えられます.そして短すぎるようならサイジングし過ぎということになりますので,サイジング時のダイの位置を少し上げるとよいかも知れません.

 

ちなみに反対のネック側もゲージになっています.

 


薬莢をキッチリ押し込んだ状態で,マウスがゲージから出っ張っていないかを確認します.これもストレートエッジで見れば確実です.

 


もしゲージ面から出っ張っているならばネックが長すぎます.もし長すぎると,発砲時に薬莢が膨張するとき,伸びたマウスがバレルのスロートで押されて弾頭に食い込み,異常に腔圧が高くなる危険がでてくるとされています.とはいえ,銃側も実際はマージンを見込んでいて,このゲージから出たら即危険ということはないはずですけども,一応ここから出るようならば切削して,溝の底の基準長 (trim to length) まで短く(トリミング)するというのが標準作法です.

 

うちでは以前,何回か撃つごとに(ネックが伸びて)トリミングしていたのですけど,ブッシュサイザを導入してからめっきりトリミングしなくなりました.トリミングすると言うことはその分質量が減るわけで,すなわちそれはその分薬莢が薄くなることを意味します.ですからトリミングしないで済むのは薬莢寿命に資することなのですが,この話はまたそのうち.

 

というわけで,case prep の済んでいない薬莢に対してケースゲージで分かることは

  • フルレングスサイジングダイにかける必要がありそうか
  • 変形,硬化などを起こしていないか(標準的な薬室の場合)
  • トリミングの必要があるか

あたりかなと思います.

 

ところで世の中には薬莢を SAAMI spec ではなくて,使用する銃の薬室にあわせた大きさ(当然 spec より大きい)にしたほうが射撃精度が向上するという考え方があって,そのような用途には今回のお話のケースゲージ,そして次回のミニマムチャンバーゲージは使えません.もしそのような薬莢にしたいときは,実際に使用する銃に装填してみるとか,使用する薬室から型を取ってゲージを別に製作するなどの対応はありますけど,ここでのお話はあくまでも SAAMI 標準的なリローディングを念頭に置いていることをご留意下さい.というか,そんなこと考えている人には自明でしょうけれども.

 

次回は似ているけれどちょっと違うと話題(どこで?)のミニマムチャンバーゲージです↓

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