週末猟師

休日に射撃や狩猟を楽しむ

鋳造弾頭の時効硬化について考える

大昔の論文を見ていたら鉛合金の時効硬化に関する記述がありました.もちろん鋳造弾頭に関する研究結果ではないのですが,物性としては参考になりますので書いてみたいと思います.

と,その前に時効硬化について説明しておかないといけませんね.合金を焼き入れしてから,ある温度にある時間置いておくと硬くなる現象です.どんな合金でも,どんな温度でも起きるわけではありませんが,有る条件が揃うと起きる現象です.

鉛合金の場合,アンチモンが含まれていると時効硬化が起きることが知られています.例えば1%含まれている場合,時効硬化が起きていないときのビッカース硬度は 6 程度(BHNも大体同じ値)ですが,これを 200℃ や 250℃ で 1 時間焼き入れした場合,時効硬化がおきます.具体的には 2000 時間すると 9 程度まで上がるという結果が読んだ論文には出ていました.ただし焼き入れ温度が 150℃ の場合は最初わずかに硬化するものの,1500 時間も経つと元に戻ってしまうようです.

実はヒ素を 30 ppm 付加すると,250 ℃ 焼き入れでビッカース硬度が 18 まで上がるというデータもありましたが,私たち自家鋳造家には危険で扱えない物質ですのでおいておきます.(カーバッテリーの鉛合金電極に含まれているのは,このような研究が元になっているようです)

というわけで,鋳造弾頭は250℃で焼き入れをして3ヶ月くらい寝かせておくと,BHNが上がる可能性があるということが分かったので,是非実験してみようと思います.