週末猟師

休日に射撃や狩猟を楽しむ

遠野物語考

さて年明け一発目の図書館シリーズです.
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遠野物語に出てくるお話しを動物別にまとめて考察を加えています.時代的にはニホンオオカミが絶滅する直前を知っている人が存命だったときあたりを含んでいます.絶滅に至った経緯なども多少は理解できる程度にとりあげられています.現在のシカやイノシシの増えすぎに対してオオカミを再導入しようなどという考えを持っている人たちがいることは承知していますが,それが結局はさらなる害をもたらすであろうことが理解できると思います. ところで従来の民俗学が主に聞き取りだけに頼っていて,例えば出てくる動物の同定などすべきところ,うやむやになっていることを筆者は問題視しています.自然科学の立場からも考察を加えるべきという筆者の意見には反対しませんが,科学的視点を導入すると言いながら,それほど多くない根拠を元に断定口調であったりするところは気になりました.あとは民俗学のあり方自体にも疑問を投げかけていたりします.ただ私はバックグラウンドが異なる以上,理解が完璧にはならないというのは仕方ないと思います.例えば私は関東人ですが,テレビで関西のお笑いを見ても,面白いとは感じないものがよくあります.関西のバックグラウンドがあれば,きっと面白さが理解できるのでしょうけども.民俗学で拾う昔話も文化的背景がないと完全な理解に及ばないものもあるはずです.そして理解できていない人が記録すれば,当然それは聞いたままに書いたつもりであっても,拾いきれないことがあるのだろうと推測できるわけです. さてここは射撃狩猟ブログなので,民俗学の話を深掘りするつもりはありません.この本をここでとりあげたのは,ちょっと昔はシカやイノシシの分布が今とは違っていたとか,マタギの社会的立場が現在とはずいぶん異なるとか,狩猟を考えたときに,関係する事柄が割と多くあって興味深かったからです.民俗学とあわせて興味のある方には,ある程度おすすめできそうです.40年以上前の本ですが,古本でも入手は可能でしょう.まあ今の話ではないので,実利はありませんし,買うほどではないかな?と思います.図書館で借りて読むのが一番良いと思います.